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「日本死ね」流行語受賞に対して「ユーキャン死ね」と騒げば。

time 2016/12/04

「日本死ね」流行語受賞に対して「ユーキャン死ね」と騒げば。

今年の新語・流行語大賞が発表されました。

「保育園落ちた 日本死ね」が、年間ベストテンに入ったことを問題視した勢力から、新語・流行語大賞を主催・運営しているユーキャンが批判されています。

 

  • あろうことか「日本死ね」に賞を授けて、お墨付きを与えるとは何事か!
  • こんなもの、ノミネートを通り越して「ベストテン」に選んだらどうなるか、想像できないのか?
  • 子どもが真似したら、どうすんの?
  • もしや、ひそかに反日の陰謀を抱える企業なのか? 白状せんかい!


そういった「良識派」の方々が、「ユーキャン、お前こそが死ね」と、ネット上で叩いていらっしゃるようです。

一時的に、Wikipediaの「株式会社ユーキャン」のページが、「株式会社ユーキャン死ね」に書き換えられたらしいとの情報もあります。

 

逆に凄いなと思いますね。民間企業がやっているただの書籍販促イベントで、ここまでの波及効果が及ぼされるというのは。 30年もの間、継続してきた信頼と認知度の蓄積がなせるわざでしょう。

新語・流行語大賞は、もともと、自由国民社の『現代用語の基礎知識』の販促イベントとして企画されました(今でも一貫してそうです)。そして、出版業界にも本格的に進出したいユーキャンが、出版ノウハウを持っている自由国民社と経営的に手を組んだため、タイトルが「ユーキャン新語・流行語大賞」になったのです。

ちなみに、自由国民社とユーキャンは、どちらも高田馬場に本社屋があります。

 

ユーキャンさんは、私にとって『東京ガールズ選挙 こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』を出版してくださった恩のある版元です。


資格試験学習の通販で、十分に利益を出してらっしゃるでしょうから、いわゆる「18歳選挙権」の開始に際して、政治や民主主義の仕組みを解説するライトノベルなんて、無理して出さなくてもいい立場です。

それでも、担当編集者が頑張って、粘り強く上層部を説得して、出版を実現してくださいました。

ユーキャンさんは出版した後、出しっ放しで、こちらからの販促提案になかなか首を振ってもらえないので、もうちょっと、あの本の社会的意義や面白さを広めるのに協力してもらえないかなーと、本気を出せばあの本を軽々と世間に知らしめるぐらいの力を持っている版元さんのはずなんだけどなーと、言いたいことが無いわけでは無いのですが(ていうか、もう言いたいことを書いちゃいましたが)。

でも、「ユーキャン死ね」は、無いですよね。

「死ね」という言葉を使って批判すべきではない。それでは、都市部の待機児童問題をなかなか解決しようとしない日本政府や自治体を「日本死ね」と口汚く批判した匿名の人物と同じレベルに成り下がってしまう…… という「良識」に基づいて物申したいわけではありません。

 

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「死」は究極のネガティブキャッチ

 

 人は、ポジティブなものにも、ネガティブなものにも反応します。

 自分にも直接の関係がある対象については、ポジティブな意味合いの物を求めたくなるのですが、自分からは心理的距離がある程度離れていて、多少は気になる程度の対象であれば、まずネガティブなものに食いついてしまうのです。

 

犯罪

不祥事

財政破綻

少子高齢化

格差

病気

借金大国

離婚

毒親

いじめ

ブラック企業

 

 やじうま根性かもしれませんね。自分よりも不幸な人を探したり、自分の存在を肯定し、優位に立てる根拠を見つけて、溜飲を下げるみたいな。

 あるいは、自分に対してわずかでも危機を及ぼす可能性がある情報について、あらかじめ把握しておきたい防衛本能がそうさせるのかもしれません。

 そして、こうしたネガティブキャッチの帝王として君臨するのが、「死」とか「殺」といった、生命の不可逆的終了を意味する言葉です。

 「死」や「殺」が大量に発生しうる「戦争」や「テロ」のほうが、本来的には深刻なネガティブワードなのですが、俯瞰的に見た現象として捉えられがちで、キャッチとしては意外と強くないのかなと。

 ひとりひとりの実感として受け止められやすいのが「死」の一文字なのだと思います。

 

 「死」は、人を動かします。

 人が死ななきゃ、法律が変わらないとも揶揄されます。

 身代金目的誘拐罪が新設されたのも、飲酒運転が厳罰化されたのも、かつて、年端もいかない子どもが死亡したのがきっかけでした。

 今まではうやむやにされていた長時間残業問題も、電通の女性社員が自殺して、会社に家宅捜索が入ったことで、ようやく状況が動かされようとしています(これで状況が動かなければどうしようもないですが)。

 そして、「日本死ね」というわずか4文字のデジタルデータがブログ上に載せられたことで、待機児童問題が改めて、思いがけない角度から注目を集めるようになっています。

 「死」の一文字は、それほど人々の心や行動に強烈なインパクトと影響を及ぼすリーサルウエポンなので、安易に乱用したあげくに「インフレ」を起こして、「効能」を下げるべきではないのです。

 

 言葉を使って人々の興味を喚起させる仕事に就いている人々にとって、「死」の一文字は最後の切り札だといえます。

 出版業界では、「死」を用いたタイトルが頻発しています。終活や死生観、葬儀など、テーマとして死が必須なら仕方ないのですが、こういうのとか、こういうのもあります。

 これらについては、一種のユーモアや積極性を感じられる使い方なので、まだ許容範囲内ですが、もっと軽々しく「死」や「殺」を使っている書籍が散見されるのも確かです。

 

 最後に残されたネガティブワードである「死」の価値まで磨り減って、社会的に感覚が麻痺してしまえば、本当にこの世は終わってしまいかねません。

 なので、「日本死ね」を流行語として受賞させたのは、コンテンツを制作する業界の立場として、まずかったんだろうなと思います。

 ただ、「日本死ね」をベストテンに入れた選考委員の決定について、ユーキャンさんがどれほど強い拒否権(ないし変更要求の権限)を持っていたのかは知りません。

 

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いらっしゃいませ

長嶺 超輝

長嶺 超輝

「ナガミネ マサキ」 と読みます。たまに、「カンダ マサキ」と間違われます。 [詳細]

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