河村俊哉裁判官、でっかいスケール感の説諭

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むかしむかし、ウンザリするぐらい昔の話。

旧約聖書の中で、モーゼはこう宣言した。

「なんじ、盗むなかれ」と。

  

窃盗というのは、最高で懲役10年を科すことができる重罪だ。

実際には執行猶予つきの懲役1年程度だったりする。場合によっては罰金刑で済むこともある。

 
しかし、10年以内に3回以上、窃盗で懲役6か月以上の判決を受けたなら、懲りないヤツだということで、4回目以降、検察は「常習累犯窃盗」という罪名に切り替えることができる。

常習累犯窃盗は、窃盗よりも重く、最高で懲役20年を科すことができる。

 
常習累犯窃盗の中には、まるで何かに取り憑かれたかのように、漫然と盗みを繰り返してしまう人もいる。生活には何も困っておらず、貯金もあって財布の中には十分な現金も入っているのに……。

しかし、窃盗を繰り返しすぎて、住む場所も仕事もあった元の生活に戻れず、食うに困って盗みを繰り返してしまう人もいるのだ。

 

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2012年1月30日 東京地方裁判所


この常習累犯窃盗は、事務所荒らしの案件だ。

30歳、小柄の男。20代は盗みを繰り返して、娑婆と刑務所を往復する生活をしていたことになる。

 

深夜に窓のサッシを壊し、ガラスを破って侵入。現金3万円、携帯電話、システム手帳などを盗んだ。携帯電話とシステム手帳も、リサイクルショップなどでの換金目的で持ち出していた。

他にも、ガラスは破ったけれども人影に気づいて逃亡した、窃盗未遂の余罪が数件ある模様。

 

実家の両親とは縁を切っている。

前の裁判では「実家に帰る」と法廷で約束していたが、結局は帰っていない。

 

男は「刑務所のほうが楽だと思った時期もあった」とも話す。

しかし、今は違うようだ。

彼には、大切にしたいものができた。守るものができた。

 

籍は入れていないが、事実上、内縁の妻として付き合っている年下の女性は、留置場まで毎日面会に来てくれる。

そして、内装業を営む工務店の社長が情状証人として出廷し、今後の雇用を約束してくれた。

男は、社長の話を聞きながら、唇をかみしめ、ジッとうつむいたまま動かない。

弁護人からの質問に答えて「今は、彼女や社長の支えを失うのが怖い。裏切りたくない」と語った男。

反省文も書いた。窃盗の被害者らに宛てて、謝罪文も書いた。

「謝罪文の文面がどれも同じだ。被害感情、盗まれたものへの思い、盗まれた状況などが異なるはずだ。そこに思いは至らないか」と、検察官にツッコまれてしまった。

今までであれば、ツッコミを受けて黙ったままだったかもしれない。

しかし、男は、余罪も含めて多数に上る被害者へあてて「今後も謝罪文を書く覚悟があります。書き直します」と法廷で約束した。

 
ここで河村俊哉裁判官からの補充質問。

「あなたは反省しているというが、窃盗は世界中どこでも犯罪、人間社会が始まったばかりの頃から罰せられたであろう行為。それをずっと繰り返してきた自分の過去を真剣に考えてください」

他人のものを盗んではいけないのは、原始時代の人でも幼稚園児でも知っている。

だが、「見つからなければ、捕まらなければ大丈夫だろう」という油断や甘えがあったのではないか。

 
あれから4年以上が経った。どこにいるかはわからないが、かけがえのない存在ができた彼は、盗癖のこびりついた生活から足を洗い、塀の外で平穏に暮らしていると信じたい。

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