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片岡理知裁判官「あなたが子どもにしたことは……」

time 2016/10/03

片岡理知裁判官「あなたが子どもにしたことは……」

2011年11月22日 千葉地裁の法廷にて。

覚せい剤取締法違反で裁かれていたのは、3歳の娘を持つ35歳の女性。

 

しかし、娘は母親のもとにはいない。

覚せい剤で4回目の検挙をされたのを期に、離婚をし、娘は、元夫と同居している。

 

前刑からの社会復帰後も、たびたび仕事の帰りが遅くなることもあった。家にひとり残されていた娘は、夫が帰宅すると「お母さんに捨てられた」と、泣きじゃくりながら駆け寄っていたこともあったという。

検察官が提出した夫の供述調書によれば、「娘は、母親が今 病院にいると思っている。『あたまがおかしくなったのを、早く治して』と言っている」という。

検察官が読み上げる娘の「声」を、席に座りながら被告人はうつむき加減で聞いていた。人がまばらな傍聴席に対しても、動揺を見せまいとして、身じろぎひとつしなかったのだろう。

しかし、心が動かないはずがなかった。

 

被告人は、覚せい剤を断続的に使い続けていた。2~3回手を染めては、1~2週間を空けて、また覚せい剤を買う。その繰り返しだった。

娘の存在を思うと、絶対にやめなければならないと、頭では解っていた。けれども、仕事や家事、育児のストレスで落ち込み、耐えられずにいると、どうしても禁を破ってしまっていた。

 

「禁酒」「禁煙」を掲げていたのに、酒やたばこを、自分の意思でしばらくやめられたから、「いつだってやめられる」と油断し、また手を出してしまう……。それに似ている構図かもしれない。

酒やたばこなら、たとえやめられなくても、自分にとっての目標を達成できないだけだから、まだ傷は軽い。

ただ、違法とされている薬物だと、話が全く違う。

「いつだってやめられる」という油断をもとに、ダラダラと続ければ、命取りになりかねない。

 

 

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薬物にも、体質の「合う・合わない」がありそうだ

長年、刑事裁判を観てきての推測だが、おそらく、酒やたばこと同じように、覚せい剤にも「慣れ」とか、体質的な「強い・弱い」があるのだと思う。

1回目からハイになれてしまう人もいれば、好奇心で最初やってみたら「気持ち悪くなるだけ」だという人もいる。

だっから、「やっぱりくだらない。もう二度と、シャブなんかやるつもりはない」と心に誓うのである。

ただ、周囲との馴れ合いで、二度三度と繰り返しているうちに、ハマってしまうのだ。

危険極まりない。

一時の油断で、覚せい剤に振り回されるだけの人生と化してしまうのである。

 

「あなたが子供にしたことは、いずれ自分に返ってくるよ。子供が捨てられたと感じたなら、今度はあなたが捨てられるかもしれない」

片岡裁判官が、そのように語りかけると、被告人は「はい」と返事し、頷いていた。

厳しい語りかけのようだが、裏を返せば、「子どものために懸命に行動すれば、いつか何かのかたちで返ってくる」という意味でもある。

 

検察官から「懲役2年6月」を求刑された被告人は、最終陳述で「今後は兄のもとで生活する」と誓い、結審した。

違法薬物は、手を染めるのは一瞬だが、完全に手を洗うには、一生取り組まなければならない。

 

 

そのほか、片岡理知裁判官のお言葉集

((過去ログ)) 片岡理知裁判官「あなたの持病のひとつを……」 2016/09/06

 

以上、このブログでは、2007年3月刊行『裁判官の爆笑お言葉集』と、2008年9月刊行『裁判官の人情お言葉集』に収録できていない説諭をご紹介しています。

 

 

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いらっしゃいませ

長嶺 超輝

長嶺 超輝

「ナガミネ マサキ」 と読みます。たまに、「カンダ マサキ」と間違われます。 [詳細]

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