人工知能の「弁護士アシスタント」生まれる コスト削減される分野は・・・
The Huffington Post 2016年05月16日
■大量の法律文書を読み取る弁護士も人工知能(AI)に頼る時代がやってきた。アメリカの大手法律事務所「ベイカー・ホステトラー」が、ベンチャー企業「ROSS Intelligence」との契約を決定。今後、この事務所の弁護士が、主に破産に関する法律のアドバイスをROSS社の人工知能から受けるという。ROSS社が発表した。
発表やROSS社のウェブサイトによると、ROSS社の人工知能サービスは、IBM社の新型コンピューター「ワトソン」を元にして開発された。例えば、弁護士が「破産した企業は、その後もビジネス活動をすることができるか」と問いかければ、人工知能が大量の法律文書を読み取り、ぴったりの回答を出す。
質問をすればするほど、人工知能は賢くなり、より適切な答え方ができるようになる。法改正や新しい判例もシステムで監視して常に情報を更新するため、弁護士が「法律ニュースの洪水」を必死に追いかけ、新しい知識をアップデートする負担も軽くなるという。
人間が読み切れないほどの量の文書を読み取れるため、これまで見落としてた資料や、関連性がないと思われていた資料を使って結論を出すこともできそうだ。
7年かけても司法試験の壁を越えられなかった身としては、人工知能が軽々と法律家としての仕事をこなすのは、なんとなく悲しみを覚えるものの、どこか痛快でもあります。
ただ、こういう世の中が来ても、仕方がありません。
法律と人工知能は、かなり相性が良いと思うからです。 社会の仕組みを、論理的に構成された条文でプログラミングしたものですからね。
そう考えると、法案を人工知能がつくったとしてもおかしくないし、だとすれば、いっそのこと政治もコンピュータが実行したほうが合理的なのかも?(そのあたりの話は『東京ガールズ選挙』でも、ちょびっと触れてます [PR])
とはいえ、絶望する必要もありません。
法的な事務処理、情報処理の仕事をAIが受け持つとすれば、人間の弁護士は、人間にしかできないことにフォーカスして行動し、技術を磨けばいいという方針が明確になるのでしょう。
それは、依頼人との心を通わせるコミュニケーションかもしれない。 あるいは、裁判官や傍聴人の心を振わせる法廷弁論かもしれない。
そもそも、数学や物理学と違い、法律論は純粋な理論ではありません。
あくまで、社会科学です。
たとえ美しく論理的な帰結が導かれたとしても、その時代の社会常識として許されるものでなければ、「信義則」や「権利濫用」「社会的妥当性」「諸事情を総合考量」などといった別の概念を持ちこんで、ムリヤリにでも修正させなければなりません。
もしかすると、人間のコミュニケーションや法廷弁論のアナログ感、信義則などのヌエ的な概念までもデータマイニングして、そっくりコピーし、さらに独自進化させる法律AIだって出現するかもしれません。
そいつらは、いよいよ恐ろしい「リーガル・ターミネーター」として、人間の法曹界を壊滅に追い込むのかもしれません。
しかし、本当に困った立場に置かれれば、「機械はイヤだ。人間の弁護士がいい」と望む人が必ずいるはずです。どんな時代になろうとも、その気持ちは理屈じゃない。
そうなると、非常に人当たりが良く、コンピュータにはできない柔軟な発想で、アナログなニュアンスの条文の綾を突けるような、凄まじく優秀な選ばれし人類のみが、弁護士の職を得られれば十分だということになるでしょう。
……だけどねぇ、それはそれで気色悪いのは、なぜだろう。